モウセンゴケ〜甘い香りに誘われて

小学生だった時に母が病気で亡くなり、父は、私の為に再婚した。

父の秘書をしていた義母は、よく、うちに出入りしていたが、私は、彼女が嫌いだった。

父は、バツイチで子持ちの苦労人の彼女に同情していたのだろうか?今となってはわからない。美人だが、値踏みするような目つきが今も好きにはなれないでいる。

彼女が来るたびに、母の小物の私物が消えていくと、私は感じていた。

母は、なんというか天然でおおらかな人だったせいだろう。いつか、そのうち出てくるわと無くなっても、気にもとめないでいた。母が亡くなり、父と再婚した彼女は大胆になり、母の私物だった物を自分の物のように使いだした。

その中に、無くなっていた物もあり、私は、やはり彼女が取っていっていたのではと思っている。

母の大事にしていた指輪とネックレスは、再婚前に隠しておいてよかったと思う。

父と再婚し、今の座にいる彼女は、母が亡くなる前から父を狙っていた気がするのだ。母がもう残り少ない命と知った父に、寄り添う秘書のふりをして、母が亡くなれば、母親代わりのように親身になるふりをして、手に入れた妻の座。

父が亡くなり、手のひらを返したように態度を変えるのだから…
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