モウセンゴケ〜甘い香りに誘われて
今回のことがなければ、あの義母は、養子になることを認めなかったと思うし、家を手放さないといけない状況まできていたのだ。
「あの人達が作った借金を、私は払いたくないので、他人に戻れるのでよかったんです」
「気づいてあげれなくてごめんなさいね。はぁぁ…お義兄さんも、とんでもない人と再婚してくれたものね。でも、優香ちゃんが義娘になるなら私には、よかったのかしら⁈」
「ふふふ、私も叔母さんの義娘になりたい」
「お見合いが上手くいかなくても、入籍済ませちゃいましょ。籍さえ移してしまえば、こっちのものよ」
「ですよねー」
叔父さんは、女2人の会話に身震いして、腕を組んで手をさすっている。
「兎に角、お見合い相手が変わったことは、先方には話してあるが、どうなるかはわからない。万が一、傘下に入る話も無くなるかもしれない。兄さんに顔向けできそうになくて、僕は気が重いよ」
「その時はその時。またその時に考えましょう」
女は強い生き物だと、叔母の一言で思ってしまう。
そうだ…今は、お見合い相手に気に入ってもらえるように頑張るのみだと意気込んでいた。
そして、障子戸の向こうから中居さんの声がかかり、私達は席を立ち、開く戸を見つめる。
「失礼します。お待たせ致しました」