モウセンゴケ〜甘い香りに誘われて

「何も考えないで済むなら、それでもいい」

グラスを取り返したはいいが、隙あらば、また、グラスを奪い飲み干してしまうようで、バーテンダーにグラスを下げさした。

「何があったか知らないが、酒に逃げても解決しないぞ」

「わかってるわよ。だ、げ、ど、もう、飲まないとやってられない。頑張っても報われないんだもの。私、これからどうしたらいいの?少しは、報われたいよ」

抱きついてきて、豊満な体が胸に当たり、彼女のつける香水なのか体臭なのかはわからないが、欲望に火がつきだす。

「はぁぁ…変なのに捕まったな。チッ…いい匂いさせて男に抱きついたら、どうなるかわからないのか⁈」

「お兄さんの方がいい匂いだよ。ねぇ、今晩、お兄さんの時間を私にちょうだい」

タイプの女に誘われて断るほど、俺はできた人間じゃない。

「誘ってるのか?」

「そうよ。私じゃ、その気にならない?」

「まさか、いい女だなってずっと見てたよ」

据え膳食わぬは男の恥…頂けるなら、喰ってやる。

腰を抱き、耳元にキスをして欲情していることを示し、このバーに来た時には、必ずおさえて泊まる部屋に彼女と一直線で向かった。

淑やかな見た目とは裏腹で、積極的な彼女に興奮する。
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