モウセンゴケ〜甘い香りに誘われて
彼女の中は、俺を離さないというように、貪欲で、絡みつく。
まるで、彼女は、モンセンゴケのようだと思った。
5枚の花びらの小さな花の咲く初夏に、葉から出る赤い線毛は、赤色が増し、モウセンゴケから出る露のような粘液の光りと混じり、不気味なほど妖艶で美しい光景となる。
葉の先から甘い匂いを出して虫を誘い、赤い線毛と、葉の先に出る粘ついた液体で捕まえて、虫を絡めとり離さない。消化液でじわじわと分解し、養分を吸収する食虫植物。
俺は、彼女の甘い匂いに誘われて捕まった虫のようだと、彼女の中を堪能しながら、じわじわと脳内がバカ気持ちいい感覚に侵されて、止まらない。
このまま、全てを吸収されて、干からびるまで、彼女の中にいたいと思う。
一夜の戯れにしては惜しい女だと、疲れ寝てしまった女の頬を撫でていた。
また、目覚めたら、抱きたい。
そう、思った女は初めてで、早く目覚めろと待ちわびていた。
「こら、…やめて」
寝ぼけて手を振り払う彼女が、目を開けて驚いている表情は、まさにリスのような大きな目が可愛いと思った。
「それはないだろう?数時間前まで愛し合った仲なのに、つれなくないか?」
「すみません。あの?」
「なんだ?」