モウセンゴケ〜甘い香りに誘われて
彼女の頬は、柔らかく、リスのように餌を詰め込んで膨らませていても可愛いだろうなと。
女に、こんな感情を感じたのは初めてだった。
「帰らなくていいんですか?」
「どうして?ここは俺がとった部屋だぞ。それにお前が起きるの待ってたんだ。起きたなら、またしようぜ…」
彼女が起きるのを待っていた俺は、再び彼女を抱いた。
彼女を一生抱けるなら、このまま、彼女の養分になってもいいと思える相手。
喰って捕えたはずが、逆に喰われて逃げられた。
一夜の名前も知らない女が、いまだに忘れられない。
なぜ、あの時、待っていろと言葉をかけずに、肩だけ叩き、シャワーを浴びに行ってしまったのかと後悔している。
「鷹也、お前もそろそろいい歳だ。遊んでないで、いい加減、後継ぐらい作れ」
「急な呼び出しは、そんなことをいう為ですか?」
「そうだ。お前には、後継さえ産めば、金で贅沢三昧できればいいと思う女の方がよかろう。親族となり、いろいろとでしゃばられては、困る。そこでだ、羽鳥運輸は、前の社長が亡くなり、実の娘と再婚相手の娘が2人いる。今は、前社長の弟が跡を継いでるようだが、経営が思わしくない。前々から、うちが狙っていたのは知ってるだろう。今なら安く手に入るついでに、見合い話を進めておいた」