モウセンゴケ〜甘い香りに誘われて
確かめてみないとわからないが、この女の妹の方が、あの女だと、直感がしている。
「爺さんも妹の方がいいんだよな⁈」
「も?とは、どういうことだ?」
「俺が探してる女、多分、妹の方だ」
「なんだと。今から、相手を変えてもらか?いや、それは、こちらから話を出した手前、失礼だな…どうするよ?」
「姉の方に嫌われればいいんだよな。少し協力してくれよ」
「羽鳥が手に入るなら、協力してやるぞ」
悪い笑みを浮かべる祖父は、久々に生き生きと楽しんでいるようだ。
鉢に植えられた食虫植物達は、祖父の趣味であり、彼は受け皿に水を足し出した。
「で、何をすればいい?」
「俺の見合い写真ってどうなってる?」
「先方からは届いたが、お前はな…零士と違って、偽名を使っているからな。どうしようかと思っておった」
東雲の男達は、外見が整う遺伝子らしく、煩わしい女達から避ける為に、俺は学生の頃から2つの名前と顔を使っている。
東雲 鷹也としては、根暗で野暮ったい外見で東雲家の後継として世間では通っている。この外見だと、お嬢様方には不評で近寄ってくる女はいなくて、楽なのだ。友人以外は俺の素性は知らない。人の本心を知るには何かと丁度よく、やめる機会を逃していた。