モウセンゴケ〜甘い香りに誘われて

母方の姓を名乗り、守井 鷹也でいる時は、守井家の次男として東雲系列の運輸機関のサラリーマンとして働き、弟は、銀行員として働いて、東雲家の男達は身分を隠している。この外見だから女には困らないが、自由に生きるには都合良く、気が向いた時に、その場限りの関係が楽だった。

だが、俺も30にもなり、祖父も痺れを切らしたようだ。

「それなら、東雲 鷹也の方で写真撮ってくるから送ってくれよ」

「あの、顔も見えない姿か?」

「そうだよ。向こうから断ってくるさ」

「それだと、妹の方とは会えないぞ」

「そこで、羽鳥の社長にも協力してもらって、見合い写真はギリギリまで見せない。そうすれば、嫌でも代わりに妹の方がってなるだろ」

「そう、うまくいくか?」

「あの女なら、叔父や会社が困るようなことはしないさ…きっと」

そういう女であってほしい願望だった。

「一応、妹の方の写真も手に入れてくれよ」

彼女であってほしい。
だが、感が外れたらと心配になり、弱腰なのは、どうしてだろうか?

そして、俺は祖父と共にこの場に立っている。

昨日になって、見合い相手が妹の方になってもいいかとの問い合わせがあり、一つ返事で承諾した祖父は、上手くいったなと笑っていたが、今の俺を見て渋い表情でいる。

「お連れ様がいらっしゃいました」
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