モウセンゴケ〜甘い香りに誘われて
「お金持ちでも、高級車のGクラスは、あんな男には、不釣り合いだったわね。あんな車に乗る男は、かっこいい男じゃないと似合わないのに。まぁ、ヨレヨレのスーツを着てるぐらいだから、誰かの車でも借りたんでしょうけど、一華、あんなのと隣、歩けない」
見た目が重要な一華。
数時間だったが、鷹也さんの良さなど一華にわかってたまるかと、はらわたが煮えたぎる気持ちで聞いていた。
「そんなこと言っちゃダメよ。優香ちゃんがあの人と結婚したら、義弟になるのよ。お金だけはあるんだから、たくさん援助してもらう為にも、余計なことは、ね」
揶揄うように口元に人差し指を立てる義母。
「さぁ、夕食にしましょう。京子さん、お願いしますね」
一華の背を押して、リビングへ戻っていく。
オロオロしだす京子さん。
「私は、大丈夫よ。2人の夕食出してあげて」
「…はい。お着物は、そこにかけておいてください。後は、私がしておきます」
「ありがとう。お願い」
脱いでいた帯を衣桁にかけて、京子さんは食事の準備へ行くと、私は大きなため息をついた。
「さいあく」
鷹也さんとの楽しかった時間が、2人のせいで薄れていきそうだ。
早く、あの2人と縁を切りたい。