モウセンゴケ〜甘い香りに誘われて

私は、ただ、彼の腕に捕まって崩れないように踏ん張るしかない。

キスが解かれ、私が崩れないように抱きとめる鷹也さんは、耳元で艶めかしく囁いたのだ。

「早く結婚して、これ以上のことしましょう」

突然だったが、この人とのキスは嫌ではなかった。これ以上のことも受け入れられる。

彼となら穏やかな結婚生活を過ごせる未来が見えた気がした。

お手伝いの京子さんは、私がこの家を出ると知り、退職することになった。鷹也さん経由だったが、彼女には新しいところを紹介してあげれてホッとしている。

なので、あの家にいるのは、義母と義姉だけになる。

あの2人に、お手伝いさんを雇う余裕があるかは知らないが、私の知ったことではない。

目先の欲に目が行っていて、そのことに、まだ気づいていない。

「優香…明日、お友達の誕生日パーティーがあるの。あなた、一緒にきてよ」

「私が?どうして?」

「あなた、東雲の御曹司の婚約者でしょ。私の義妹が婚約者だって自慢しちゃたの。東雲の御曹司って、ミステリアスな存在だったのよ。一部の人しか知らないの。ほとんどの人は会ったことがないの。まぁ、あれだから、誰とも会えなかったんでしょうけど、ふふふ。兎に角、一緒に来て」
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