モウセンゴケ〜甘い香りに誘われて
東雲家の嫁になるなら、親戚付き合いは大事だと、即座に返事をし、静香さんのような人なら、姉のように慕うことができる気がすると微笑んでいた。
その後は、静香さんが離してくれず、次々と、ご友人を紹介されてしまう。
「あの、ご紹介は嬉しいんですけど、ご挨拶していない方もいらっしゃいましたよね」
「あー、あの方達は、ただの知り合い。友人ではないもの。今後、東雲に嫁ぐあなたとの付き合いもない、紹介する必要のない人達よ。顔も覚える必要もないわ。あの人達には、あなたの義姉さんぐらいがちょうどいいのよ」
「どういうことですか?」
「私達のような人間に、寄生しようとする人種よ。あーいうのは、平気で裏切るわ。そんな人に大事なお友達は、紹介できないでしょ」
「そうですね」
「だから、あなたの義姉さんのように、したたかで性格が悪い人は、利用させてもらうの。勝手に勘違いしてくれるもの。ふふふ」
怖いと、思わず静香さんの手を離してしまうが、また、手を握られた。
「知り合ったばかりだけど、あなたは、私の大事なお友達って思ってるのよ。お兄様の大切な人だもの。変な人を紹介なんてしたら、父に言いつけられて、家族中から怒られることになるもの。そうだ、私達、お友達なのに、お互いの名前も呼び合ってないわよね。優香」