モウセンゴケ〜甘い香りに誘われて
話せば話すほど惹かれる。
彼女の家の事情も知り、助けてあげたいと思う。
だが、彼女は自分で行動を起こし、婚約者となった俺に、手助けなどあの日以来、求めてこないのだ。
親の残した会社と家を守ろうとする精神は、尊敬する。だが、その為に自分を犠牲にして、好きでもない男と結婚しようとする彼女に腹が立った。
何度もあの夜を思い出して欲しくサインを送るも、気づきもしないで別の男に(俺だが)嫁ごうとする。少しぐらい、意地悪してもいいだろうと、今もこうして面倒なことをしている。
ただ、真実を知って驚く彼女の表情を見たいが為に…子供じみたイタズラを続け、伝えるタイミングを逃している。
いや、ここまできたら、言えないでいるのだ。
真実を知り、嫌われるかもと思うと、尻込みして、俺らしくない。
そんな姿を、母方の従姉妹の静香はバカにして笑う。
女に本気にならないできたバツだと。
そんな静香の誕生日パーティーは、毎年のことながら、盛大に行われた。
そこへ、義姉といる優香を見つけ、招待したのか確認しようと、静香に近寄る。
そこへ、義姉の方に見つかり、俺に視線を送りながら側までやってきた。