モウセンゴケ〜甘い香りに誘われて
なぜか最近になり、義姉の方が守井 鷹也の俺に接触しようとしてきて、煩わしく思っている。
会話中も優香が警戒している様子に、イタズラ心が起こり、2人きりなるように静香と義姉を追い払って、声をかけた。
「よっ、あの夜以来だな」
「覚えてたんですね」
彼女の頬を撫でてしまうのは、もう、癖のようなものだ。この柔らかな頬が愛しい。
「あんないい夜の女は、なかなかいないからな」
「そうですか」
冷たく突き放す口調に苛立ち、気を引きたくて余計なことを言ってしまう。
「東雲の婚約者だって⁈」
「はい、先月の頭に」
「ふーん。このまま俺とまたしようぜ」
「…いいえ。私は彼の良き妻になると約束しました。あなたとの夜は、私の慰めになり心を助けてもらって感謝しています。それだけで、これからはあなたとは何もありません」
操をたてる優香に、可愛さもあり、憎さもおこる。
この、ごちゃごちゃになる感情を、どこにぶつければスッキリとするだろうか?
「ほんと、相変わらずはっきりしていて、気持ちいい」
だが…思い出せと腰を抱き寄せ囁く。
「お前は、俺を魅了したただ一人の女だ。頭の中バカになりそうなぐらい気持ちよかったのは、俺だけか⁈。お前も、俺を忘れられないはずだ」