モウセンゴケ〜甘い香りに誘われて
ゾクリとするほど色っぽい表情をさせていて、イモ男姿の俺だろうが、彼女は渡したくない。
彼女を抱くのは、この俺だけだと。
「お前は俺の女だ」
おでこを小突いて、知らしめる。
ここにいない、もう一人の自分に向けた宣言のようなものに、自己嫌悪に陥り、頭を冷やす為に彼女から離れた。
何、やってるんだ…バカなのか?
もう、自分自身が何をしたいのかさえ、わからず、どうやって彼女を怒らせずに、伝えられるのか頭を悩ませていた。
そこへ、義姉の方が近寄ってきた。
「鷹也さんとお呼びしていいですか?」
許可もなく、腕に手を絡ませて胸を押しつけてくるが、なんの魅力も感じないし、この女から香る甘い匂いは、吐き気がおこるようだ。
返事を返すこともしないが、なかなか離れない。
わきまえることを知らない女。こんな義姉を持った優香の苦労が伺えてくる。彼女の為に、この親子とは断絶させようと決意していた。
俺は、静香に視線を送り、アイコンタクトで状況を察してくれたのはよかった。
「鷹也お兄様、お遊びは、ほどほどにしないと、婚約者の方にふられますよ」
だが、それはないだろう…
もう少し言葉を考えて欲しかったと、静香を睨んだのだ。
その間に、優香は、そこにあったグラスの白ワインを俺にぶっかけてきた。