モウセンゴケ〜甘い香りに誘われて
怒りながら、泣きそうな顔をする?
なぜか、謎の煽り文句が口から出ていた。
「その嫉妬はもう一人の鷹也でもするのか?」
「あなたに嫉妬なんてしていないわ。静香さん、ごめんなさい。失礼します」
えっ…
俺は、何を…
結構なダメージをくらい、ボー然と優香の後ろ姿を見送る。
「バカなの?早く、追いかけなさいよ」
静香にそう言われて、やっと、体が動き広い会場をあちこちと探すが、優香は見当たらない。
その時、胸ポケットに入れていた携帯が振動し、雑音に声が負けてしまい、聞き取りづらく急いで会場の外へ。
『もしもし、聞こえますか?』
「優香」
『会いたい、です』
彼女の泣きそうな声に、唇を噛んだ。
「動くなよ」
通話を切り、彼女のいる場所を聞き出した俺の足は、小走りから全速力で走り出した。
30にもなって俺は、何をしている。
好きな女を泣かせて、何をしている⁈
そうか…俺は彼女に一目惚れしていたんだと、今になって気がついた。
だから、好きな子に構ってほしいガキのようなことをしていたのだ。
静香がいうように、まともに恋愛などしてこなかったせいで、大人の駆け引きができず、あんな面倒なことまでして、彼女の心を探ろうとしたバカな男。