モウセンゴケ〜甘い香りに誘われて

「…もう一度」

「えっ?」

「最後の方だ」

「…2人を好きになってどうしようって」

「そうだ。どっちの俺も好きなんだな」

「…はい」

ぎゅっと抱きしめ『よかった』と呟いていた。

彼女の髪を撫で、頬を掴んで互いの顔を見つめ合う。

「どちらの俺でいても、もう一人の自分に嫉妬するぐらい、お前が好きだ」

「嬉しい…ぷっ、あはは。それなのに、こんな面倒なことしてたの?」

感動するように涙を浮かべていた彼女だが、急に、俺のおかしな行動が面白くなったようだ。

「笑うなよ。いろいろ理由があるんだ」

「その理由を聞かせてくれないの?」

彼女の頬を掴んでいるその手に、頬を擦り付けて微笑む優香。

「…俺のベットの上で聞かせてやろうか?」

今度は、彼女の頬を指を背で撫でて、誘惑すると、「言う気あるの?」と、笑う。

「終わった後なら」

苦笑する優香を抱き上げて、俺の車に向かい乗り込んだ。

「お酒飲んだでしょ」

「いや、一滴も飲んでいない」

「さっき、お酒の匂いしてたわよ」

「あー、お前がぶっかけてくれた白ワインだな」

「えっ?お水じゃなかったの?ごめんなさい」

「許してほしいなら、今、ここで少しだけ愛させろよ。ずっと飢えてたんだ」
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