モウセンゴケ〜甘い香りに誘われて
エピローグ
穏やかな風がふく青空の下、私達は、海が見える丘の上の教会で、今日、結婚式を行う。

半年前にあった静香さんの誕生日パーティーの後の私達は、お互いの気持ちを確認できた歓喜から、少しだけ、羽目を外し、彼の車の中で淫らなことをしてしまった。

余計に昂った私達は、結局、彼のマンションまで辿り着けず、彼が押さえたホテルの部屋へ行くことに。

そこは、彼と一夜を共にした部屋。

出会いをやり直すかのように、愛し合い、思い出すと、結構な羞恥心に苛まれるので、できるなら、あの時の自分は脳裏から消去したいが、彼の愛を感じた一夜だったので、いいところだけ思い出すようにしている。

東雲という名と彼の外見に、一華のような女が群がり、それが煩わしく外見を変えていたことは、理解できた。だが、私だと知りながら、あの外見で見合いにきて、東雲鷹也として会う時も、あの外見を通し続け、黙っていたのは腹立たしい。

その理由が、私の本心を確かめる為だったということだが、私は、見合いの際、ちゃんと伝えたはずだ。

誠心誠意、良き妻になると。

まずは、人を疑うことが、彼らの定めだといえ、信用できないからと外見を偽る必要があったのか?

彼の話を聞いていて、先ほどまで愛しあった仲だというのに、ケンカ越しに怒っていた。
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