モウセンゴケ〜甘い香りに誘われて
時折、吐息が肌をなぞり、声を我慢している。
男性陣からのヤジに耐えながら、足から抜き取られ、鷹也さんは、立ち上がり頬にキスしてくる。
「甘い匂いで酔いそうだよ」と、艶めかしく笑うのだ。
「バカ」
投げられたガーターは、弟さんの手元に渡り、困惑していた。
その後のガーデンパーティーで、義母と一華は、図々しく近寄ってくる。
「鷹也さんが、こんな素敵な人だったなんて知っていたら、うちの一華と結婚して欲しかったわ」
「そうよ。黙ってたなんてずるいわ。静香さんのお兄様のふりをして、私を騙してたんですね」
恨みがましいように睨んでくるが、鷹也さんは平然としている。
「一言もそんなことは言っていない。勘違いしたのは、そちらだ。見合い写真も、相手の心理を見分ける手段。代わりに優香を来させてくれて感謝はしている」
悔しそうに2人は唇を歪めているとこへ、追い討ちをかけた。
「今の住んでいる家、お売りすることになりました。準備もあるでしょうし、一カ月以内に出て行ってください」
「えっ?母親を追い出すの?」
「一華達、東雲さんのお世話になれるんだよ」
「そんなわけないだろう」と、鷹也さんは低く呟いていた。