モウセンゴケ〜甘い香りに誘われて

時折、吐息が肌をなぞり、声を我慢している。

男性陣からのヤジに耐えながら、足から抜き取られ、鷹也さんは、立ち上がり頬にキスしてくる。

「甘い匂いで酔いそうだよ」と、艶めかしく笑うのだ。

「バカ」

投げられたガーターは、弟さんの手元に渡り、困惑していた。

その後のガーデンパーティーで、義母と一華は、図々しく近寄ってくる。

「鷹也さんが、こんな素敵な人だったなんて知っていたら、うちの一華と結婚して欲しかったわ」

「そうよ。黙ってたなんてずるいわ。静香さんのお兄様のふりをして、私を騙してたんですね」

恨みがましいように睨んでくるが、鷹也さんは平然としている。

「一言もそんなことは言っていない。勘違いしたのは、そちらだ。見合い写真も、相手の心理を見分ける手段。代わりに優香を来させてくれて感謝はしている」

悔しそうに2人は唇を歪めているとこへ、追い討ちをかけた。

「今の住んでいる家、お売りすることになりました。準備もあるでしょうし、一カ月以内に出て行ってください」

「えっ?母親を追い出すの?」

「一華達、東雲さんのお世話になれるんだよ」

「そんなわけないだろう」と、鷹也さんは低く呟いていた。
< 61 / 62 >

この作品をシェア

pagetop