モウセンゴケ〜甘い香りに誘われて

「食虫植物で、葉の先から甘い香りを出して虫を誘う。そして、葉の先でキラキラと光る粘液で虫を絡めて離さない。養分を吸い取り、分解して全てを栄養に変えるんだ」

行為の最中に、なぜそんな話なのかと頭の片隅に過ぎるも、男により快感を与えられ続けて脳内は蕩けていた。

そこへ、ズンと体に衝撃がはしる。

下から一気に突かれたのだ。

「ほら、お前は、まさにモウセンゴケだよ。甘い匂いで俺を誘って、絡めて最後まで搾り取るまで離さないんだよ。俺が枯れるまで上で乱れてみせろ」

「あっぁん…」

体を起こした男が自分の唇を舐め、その色香にあてられた私は、男の首にしがみつき自らその唇に唇を重ねる。

それを待っていたように強引に唇を割り、見せつけるように舌を絡めていき、私も負けず絡めとるのだ。

下からの突き上げが激しくなるが、舌を絡めたままのキスは緩むことなく、唇の端から涎がたれ、顎をつたい、首筋まで流れる。

「お前…可愛いな」

いい声でキスを解いた男は、首筋を舐め上げる。

「…どこもかしこも甘いよ」

そんなわけないとわかっているが、睦言でも嬉しいと思うのは、好みの声で囁かれ、甘く、スパイシーな香りが疲弊している心に染みているせいだろう。
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