俺が君を守ってやる〜御曹司の執愛はどこまでも深く〜

歪な関係

「遅くなってごめんね」

帰宅が21時を過ぎてしまい大慌てで駅から走って帰ってきた。

「本当だよ。腹減ったわ」

「うん、ごめんね。今すぐに作るから」

洗面所で手を洗うとすぐにエプロンをつけキッチンに立った。悠真(ゆうま)は帰ってきてシャワーを浴びたのか、スウェットに着替えており、テレビの前の机にはビールの缶が3本並んでいた。
私は少しも休むことなく慌てて冷蔵庫を開け回鍋肉と味噌汁を作った。

「あ、洗濯しまっておいてあげたから」

「あ、うん。ありがとう」

しまってくれているのはありがたい。でもソファの上にハンガーごと置かれている。シワになってしまうからすぐに畳むか、どこかにかけておいてくれたら嬉しかったな、と思うけれど言えない。

「お待たせ」

彼の座るテレビの前のテーブルに料理を並べていく。私もようやく座り一息つこうかと思ったところで彼からの一言にまた傷つく。

「またこれ? 最近手抜きだよな。最初の頃は色々食べさせてくれたのに」

ため息混じりに言われた言葉は私の心を抉る。
だったら食べなければいいじゃない、たまには作ってよと言いたい。私だって仕事をして帰ってきてるの。悠真より早く起きて家事を済ませてから出かけている。私の方が仕事から帰るのはいつも遅い。それなのに最近文句ばかり。でも私が言い返そうものならものすごい勢いで言い返される。彼の怒りが収まるまで謝り続けることになる。
けれどそのあとは決まって仲直りのエッチになる。

「ごめん、俺ももっと頑張るから。香奈美のことが好きだ。香奈美がいないとダメなんだ」

もっと頑張ると言った翌日には元の生活に戻っている。でも彼に好きだと言われるだけで私は必要とされていると思い、尽くしてしまう。よくないと思いながらも彼のためと思うだけで自分も満たされていた。
< 1 / 105 >

この作品をシェア

pagetop