俺が君を守ってやる〜御曹司の執愛はどこまでも深く〜
「なんなんだよ、さっきから。ムカつくんだけど」

ビクッとした私を睨みつけてきた。思わず後ずさってしまうと、その様子にさらに苛立ったようで、

「なに? その態度。俺が何かするって思ってるの? 香奈美にそんなことしたことないよね?」

手を上げたりとかされたことはない。でも今の悠真の様子を見ているとそんな不安さえ感じてしまうくらいに威圧感がある。初めて彼を怖いと思った。

「もういい、別れよう。慰謝料よこせ」

「い、慰謝料? 悠真が浮気してたんだよね。それなのに私が慰謝料なの?」

「あぁ、俺は結婚する気で同棲したのにお前がしたくないって言ってるんだろ。詐欺じゃない?」

そんな……。こうなった理由は悠真にあるのに、私が詐欺なの?悠真の言っていることが理解できない。

「悠真がこんなことしなければ……」

私が口を挟むと睨みつけてきた。

「遊びだって言ってるだろ。香奈美と結婚する気で同棲までしてるのに破談にするんだろ? なら慰謝料だろ」

こんな発想になるなんて驚きでしかない。むしろ浮気が遊びだと言うのなら不誠実だ。そして遊びならいいと思っているのならこれからも繰り返すのだろう。これまで尽くしてきた自分がバカバカしくなった。なぜこんな人だと気がつかなかったのだろう。今までも理不尽なことがたくさんあったのに「好きだよ」って言葉に安心していた。この年齢になり結婚を意識していたからこそ、彼の要求が理不尽であると思っていたのに口に出せなかった。30前に結婚したいと自分も打算があったのだと思う。
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