俺が君を守ってやる〜御曹司の執愛はどこまでも深く〜

逃げるが勝ち

月曜日。
いつも通り仕事は始まる。
私は昨日慌てて詰め込んだ服に着替え、ビジネスホテルをあとにした。
悠真と暮らしてお金が貯まるわけがない。だから貯金だってそんなにあるわけじゃない。昨日はビジネスホテルに泊まったが、今日からどうしようかと不安で仕方ない。でも働かなければお金はもらえない。
職場のデスクの下に荷物を押し込むといつも通り仕事を始めた。

「中丸さん、調子悪い？」

夕方になり、藤代さんが顔を出したとき声をかけられた。

「え？」

顔を上げると私への仕事じゃなかったはずなのに事務所を出る前私のデスクに立ち寄ったようだ。

「なんだか顔色が悪いみたいだけど、大丈夫か？」

「大丈夫ですよ」

私の様子を伺うような視線に気まずくなり、思わず視線を落とす。

「ならいいけど……」

仕事でもないのに私のデスクに藤代さんが来ているだけで、周りからの視線を集めてしまう。彼もそれを分かってか、そのまま事務所を出て行った。
夕方になり、周りはちらほらと帰り始めた。
私はもう待っている人もおらず、気兼ねなくキリのいいところまで仕事をすることができた。
20時になり、帰ろうと思うがどこに行けばいいのか途方に暮れてしまう。
暗くなったパソコンを見つめ、立ち上がれずにいた。
実家は金沢で帰れない。それに結婚間近だと喜んでいたので今の状況を話すなんてできない。
友人はみんな結婚し始めたり、同棲したりしており、私が転がりこめるとは思えない。

「はぁ〜」

思わず溢れた大きなため息。すると後ろからプッと笑う声が聞こえてきた。
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