俺が君を守ってやる〜御曹司の執愛はどこまでも深く〜
その後も一品料理が次々と運ばれてくる。ホタテとエビのカナッペや真鯛のカルパッチョなど洋風なのかと思っていると揚げ物に韓国海苔が使われていたり、棒寿司が出たりと多国籍なんだとわかる。注文していないからこそ、次に何がくるんだろうと楽しみで仕方ない。
私がどの食事も残すことなく楽しんでいると藤代さんも笑って一緒に味の感想を伝え合った。

正直なところ外食なんていつぶりだろう。悠真といると外に食べに行くのが面倒くさいと言われいつも私が作っていた。私だって疲れることもあるからたまには外食にしたい時もあった。でも悠真が嫌がるから私は諦めていた。私の食事が一番美味しいって言われたから、彼に喜ばれることが嬉しくて頑張った。食事だけじゃない。彼に喜んでもらえるのが嬉しくて私は彼にいわれるがまま何でもしてあげていた。同居を決めた時に家事は分担しようって相談したはずなのにいつの間にか家事は全て私の仕事だった。家賃も彼が結婚資金を貯めるからって言われ、私は生活費の全てを負担していた。そんなに収入も多くないなか私は自分のものを切り詰め、彼との結婚のために努力した。
でも冷静になってみたら彼は本当に貯金していたのかさえ怪しい。あの可愛い女の子と温泉に行けて、私とは外食ひとつ行っていない。食費だって払ってくれたこともない。私は彼のなんだったんだろうと虚しくなる。
もちろんあのテレビのおかげで彼との生活を見直すきっかけになり感謝している。このまま何も知らずに結婚していたらと思うと苦労していたと思う。
でも私のこの数年はもう戻らない。
私が払っていたマンションとはいえなぜか追い出されてしまった。その上私が負担していた生活費のせいで貯蓄は吹いたら飛ぶくらいのものしかない。これからどうしたらいいのだろう。
急に冷静になると私の目からスッと流れ落ちるものがあった。
ハッとして手で拭き取ると、その姿を藤代さんにみられていた。
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