俺が君を守ってやる〜御曹司の執愛はどこまでも深く〜
「何があった？」

私を見つめる真っすぐな視線に目を逸らせなかった。

「隠してもダメだ。話してみるといい。俺は君が困っているなら助けたい」

ストレートな彼の言葉に私はまた涙が流れた。慌ててハンカチを取り出すと涙を押さえた。

「同棲している彼と別れたんです。彼が他の女の子と一緒に旅行に行っていて、それでも私と結婚するって……。私にはそんな彼の気持ちが理解できなくて家を出てきたんです」

「そうか」

「一緒に暮らすまではとてもいい人だったんです。でも一緒に暮らし始めたら私がしてあげるのが当たり前になってしまって。それでも彼が喜んでくれるのならと私が彼に尽くしすぎてしまったのも悪かったんです」

話始めると色々な感情が溢れ出てきて私はハンカチを目元から離せなくなった。

「結婚しようって言われて、その言葉を信じていたんです。だから彼に尽くしてきた。彼の機嫌を損なわないように頑張ってきたんです。でもその結果、彼は女の子と旅行に行き、遊びだからと謝ることもなかった。私ってなんなんでしょうね」

藤代さんは私の話に口を挟まず、静かに聞いてくれた。その空気感がなんともいえず心地よく私は話が止まらなくなってしまった。

「彼が結婚資金を貯めてくれるっていうから私は家賃も生活費も出してました。でもよく考えたら彼の通帳なんて見たこともない。貯めていたのかさえ今となってはわからないですよ」

最後は自虐のように笑ってしまった。口に出すと情けなさすぎて、自分の愚かさに笑うしかなかった。本当にバカだった。なんでそこまで彼との結婚にこだわっていたんだろう。彼の機嫌を伺いながら生活するなんて間違っていたとなぜわからなかったのだろう。
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