俺が君を守ってやる〜御曹司の執愛はどこまでも深く〜
「中丸さん、この資料が明後日の会議に必要なんです。お願いできませんか?」

営業の真鍋(まなべ)くんが私のデスクまでやってきた。2年目の彼は営業に出るようになると持ち前の明るさや人懐っこい感じから成績を出している。タイトなスケジュールでも受けてきてしまうため持ち帰ってきた資料などは私たち事務に重く負担がかかる。けれど彼のため、ひいては会社のためと思うと断れない。

「明後日までなのね。分かったわ」

「ありがとうございます! 中丸さんにしか頼めなくて」

タイトすぎるスケジュールにクレームをつける事務もいる。むしろ言った方がいいとは思っている。毎回こんなことをされては困る。だからこそ真鍋くんは人を選んで頼んでくるのだろう。真鍋くん自身も無理難題を押し付けていると自覚しているはず。けれど断れない営業の辛さもあるのだろう。
でもこれを受けてしまうと周りの事務から私が標的になってしまう。自分だけいい顔をして、と影口を言われているのも知っている。私は事務の中でも少し孤立気味だ。だからこそ悠真と結婚して精神的安定を求めているのだと思う。

「真鍋! また中丸さんに無理なことをお願いしているんじゃないだろうな」

後ろから藤代(ふじしろ)さんが声をかけながら近づいてきた。私の3つ年上ですでに課長になっている彼は周囲からも一目置かれた存在。私が入社した時はまだただの営業だったが、その手腕はすでに社内で有名になっていた。180センチはゆうに超えていそうなほどの高身長。目鼻立ちがはっきりしておりツーブロックになった髪を後ろに流してセットしていた。彼が近づくと柔軟剤なのか、香水なのか爽やかな匂いがしてきた。

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