俺が君を守ってやる〜御曹司の執愛はどこまでも深く〜
「困っているんだろう?」

「でもそんなことできません」

感情に流されているだけで藤代さんは絶対に後悔する。ただの同僚を誘うなんて絶対にダメ。

「実は最近お手伝いにきてもらっていた人が急病で休んでしまって困っていたんだ。だから部屋を貸す代わりに手伝ってくれないか?」

え?
彼は私を誘った訳ではなく本当に純粋に心配して部屋を使わないかと言ってくれたんだ。勘違いして早とちりしてしまったことが恥ずかしい。でも彼は私の勘違いに気がつかなかったようで、仕事の話をしてきた。

「俺は家事が得意ではなくて、できれば少し手伝って欲しいんだ。もちろんお金は払う。部屋は客室を使ってもらって構わない。俺も仕事が忙しいから一緒にいる時間はほとんどないだろう」

「でも、ただの同僚にそんなことを気安く提案してはダメだと思います」

彼ほどの見た目だ。こんなおいしい話を聞いたら周りの女の子たちは飛びついてくるだろう。

「もちろん誰でもいい訳ではない。俺だって人を見て声をかけている」

「でも……」

「君は住むところもなくて困っている。それに家事もできそうだ。俺はお手伝いさんが急に休んで困っている。これはwin-winの関係じゃないか?」

正直今日泊まるところさえ困っている私にはありがたい話だ。でも本当にこんな都合のいい話に乗ってしまっていいのだろうか?
彼の人柄はわかっているつもりだ。真鍋くんをみていても彼の下でのびのびと育ててあげている面倒見のいい人だ。もうどうにもならないところまできている私は彼から一歩下がり頭を下げた。

「お願いします」

「わかった。だから頭あげて」

そっと頭を上げると彼はいつもと一緒で優しく微笑んでいた。
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