俺が君を守ってやる〜御曹司の執愛はどこまでも深く〜
「すごいですね」

やっと出てきた言葉はこれだけだ。これ以外に言葉は見つからない。

「そうだな。だから俺も持て余している。俺が普段使うのは自室とバスルームとトイレくらいだ。キッチンもよくわからなくてケトルとレンジ、冷蔵庫くらいしか使ってない」

「え?」

「あまりに広すぎて一人でいるのが寂しいくらいだ」

苦笑いを浮かべる彼に思わず笑ってしまう。彼ほどの人ならどんな女の人でも誘えそうなのに、寂しいだなんて可愛いなと正直少しだけ思ってしまった。

「でもそれならどうしてここに?」

「管理を任されているんだ」

「だったら私が一緒に住むわけにはいきません。藤代さんも間借りってことですもんね」

「それなら問題ない。そもそも何かあるなら最初から声をかけていない」

いつもの藤代さんの口調で有無を言わさない強さを感じる。本当に私まで間借りしてもいいのだろうか。他の部屋も案内されるがメインのベッドルームの他に客室が3部屋あるようだ。洗面所に至っては2ボウルになっていてホテルのように並んで使える作りになっていた。

「一緒にこの部屋の掃除をお願いしたいんだ。床はロボットがしてくれるが、水周りをお願いできないか? もちろんお金は払う。次の部屋が見つかるまでもいい」

こんないい条件はないだろう。住む部屋に困らず、ここを掃除をするだけ。むしろ今まで悠真との暮らしで何もかも仕事の後にこなしていたことだ。部屋は広くなるが、物はないし、汚す人もいない。

「あの、食事とかもお手伝いの方はされていたんですか?」

「あぁ、作りおきしてくれていた。でも中丸さんには本業があるんだから気にしないでいい」

食事も作らない、床はロボットがする……。本当にそんなんでお世話になっていいのだろうか。
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