俺が君を守ってやる〜御曹司の執愛はどこまでも深く〜
「コーヒー飲む?」

「はい。お恥ずかしながら使い方がわからなくて………教えていただけませんか?」

「あぁ。すまない。これだけはめんどくさくても使っているんだ」

彼はタンクに水を入れるとスイッチを入れ、棚にしまわれている豆を取り出すと挽き始めた。そしてその粉を器具に詰めていく。

「ここに押し固めるよう入れるんだ。この手間が味を左右する」

キュッと詰め込む彼の横でじっと見ていると、詰め終わった器具をマシンにセットし、カップをふたつ並べておいた。ボタンを押すと抽出が始まりいい香りがたってきた。

「ミルクがないからカプチーノができないが、買ってきたらこの横にある器具で泡立てられる」

「家でこんな素敵な飲み物が飲めるなんて素敵ですね」

私は彼からカップを受け取ると香りを嗅ぎ、朝から幸せな気もちになれた。

「俺は7時45分に家を出る。その時間に出て途中で朝食をとってから行くんだ。中丸さんはどうする?」

「一緒に食べる訳にはいかないので私もそろそろここを出て、どこかで朝食を食べてから出勤します」

「そうか」

それだけ言葉をかわすと彼は飲み途中のカップをダイニングテーブルに置き、自室に着替えに行ってしまった。私はそのまま椅子に座り、外を見ながらコーヒーを飲み干すとキッチンで洗い、拭くと食器棚へ戻した。
私が自室に戻り着替えを始めると彼は出てきたのかそのまま玄関に向かう音が聞こえビクッとした。まさかドアを開けるようなことはないだろうが着替えをしている部屋の外に彼がいると思っただけでドキドキしてしまう。自意識過剰だと思うがこの心臓の音だけはどうにもならない。

「先に行く。鍵を忘れないように」

ドアの外から聞こえた声に「わかりました」とだけ返事をするとすぐにドアの閉まる音が聞こえてきた。
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