俺が君を守ってやる〜御曹司の執愛はどこまでも深く〜
私は金銭的なこともありこの部屋に住むようになってからも自炊を続けていた。と言っても一人分だし、今までのようにあれこれ注文をつけられるわけでないから気楽なものばかり。でも食材はなんとなく揃っているから昼食くらいならなんとかなるだろう。
スマホをキッチンカウンターに置き、冷蔵庫の中身を確認しながらメニューを決める。冷凍庫にシーフードミックスがあるし、アスパラやキノコも半端な量残っているのをみてパエリアを作ることにした。この家には炊飯器がなくてレンジで米を炊いていたが、パエリアならフライパンでできるし簡単だ。米を洗いざるにあげておく。ニンニクを入れたフライパンで野菜やウインナーを炒め、米を入れる。それをしばらく炒め米が透明になったところでスープを入れる。と言っても市販されているスープの素だ。シーフードミックスを入れ、サフランの代わりにカレー粉を入れ蒸していく。残り物の整理のような適当なパエリアが出来上がったが藤代さんに出すのならもっときちんとしたものを考えるべきだったのではないか、と途中から不安になってきた。私の作る節約かつ適当な料理が受け入れられるのだろうか?
ちょうどいいタイミングで彼は自室から出てきた。

「お、なんだかいい匂いがする」

「パエリアなんです。でも……なんていうか、適当なんです。お店で食べるものとは違いますし、材料もちょっと」

私が言葉を濁していると彼はそれを聞いていないのキッチンに見に来てしまう。色はカレー粉のおかげで少し似ているかもしれない。でも見た目はシーフードミックスなので立派な貝類やエビがない。華やかさに欠ける。彼はこんな料理食べたことなんてないだろう。決まりが悪くて思わず苦笑してしまう。

「美味しそうだな。楽しみだ」

彼は食器棚から取り皿とスプーンを出すとダイニングへ持っていった。鍋敷きが見つからず、ダイニングに持ってくのを悩んでいたらタオルを持ってきてくれ、それを重ねてテーブルに置くとフライパンを運んでくれた。

「テーブルが傷まないですか?」

「大丈夫だろ」

そんな適当なことでいいのか不安になるが、もう置いてしまったものはどうにもならない。タオルをどかした時のことが心配だがもう手遅れだ。
フライパンの取っ手を外し、キッチンに戻ると飲み物を用意する。私がいつも飲むインスタントのオニオンスープなのでお湯を注ぐだけ。食事の準備をしますと言ったが手抜きすぎだろう。だから悠真にも呆れられたのかもしれない。思い出したくもない記憶が蘇る。
テーブルにスープも運ぶと湯気が立ち込めこの広い部屋の温度が上がった気がした。
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