俺が君を守ってやる〜御曹司の執愛はどこまでも深く〜
「藤代さん!」

真鍋くんが慌てたように振り返った。

「中丸さん、いつも悪いね。真鍋が無茶振りしてるんだろう?」

「いえ、私の仕事ですから」

慌てる真鍋くんをフォローするように声をかけるとあからさまにホッとした顔をしていた。

「真鍋、いくら相手に言われても無理なものは無理と言わないと後から首を締めることになるぞ。いつでもイエスと答え続けていたら相手からどんどん無理な要求をされる。ダメなものはダメと言えるようにならないと」

落ち着いた声で正論を言われるとビクッとしてしまう。

「すみません」

「真鍋のいいところはよく分かっている。相手に好印象を与えるのも天性のもので素晴らしいと思うよ。だからこれからはもうワンステップ進んで妥協案を提案できるように頑張ろう」

「はい!」

藤代さんは決して怒らない。相手のいいところを見つけ、認め、その上で相手を諭す。存在意義を認めてもらえ、さらに上見を目指すよう声をかけてくれる。きちんと話してもらえる真鍋くんを羨ましく思う。
私は仕事でもみんなの補佐しか出来ない。きちんと意思を伝えることも出来ず、家でもダメ。何をしてもそつなくこなせない。
こっそりとため息が漏れてしまう。

私は頼まれた真鍋くんの資料に取りかかろうと思ったが、ルーティンワークもまだ終わっておらず、ひとまず横に置いた。
午前は電話対応もあり休憩が取れず、給湯室でクッキーをつまんで終わってしまった。時間をずらして休憩することは認められているが、昨日悠真に煮込みハンバーグが食べたいと言われたので残業は出来ない。慌ててデスクに戻ると朝頼まれていた眞鍋くんの資料作りに取り掛かった。
後ろから「中丸さんってお人好しっていうか良い顔したがりっていうか」と揶揄するような声が聞こえてきた。
これはみんなだってやればできる仕事。でもタイトなスケジュールを指示されるからクレームをつけるだけ。確かにそれをなんでも受け入れてしまう私が間違っているのかもしれない。でもつい頼られたらどうにかしてあげたいと思ってしまう私の悪いところなのだろう。
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