俺が君を守ってやる〜御曹司の執愛はどこまでも深く〜
「はい、中丸です」

『咲坂です』

「お世話になっています」

『こちらこそ。それで早速なんだけど桂さんと話をしてきました。弁護士だと伝えたらだいぶ驚かれていました。それで、あなたとは結婚するつもりで、今は少し意見の相違があって家出してしまっただけだと話していました』

「まさか、こんなこじれているのにまだそんなことを言っているんですね。実は今さっき彼から電話が何度も入りました。直接出ませんでしたが留守電が残っていて……、マンションを出るつもりはないし私と結婚する意思があるから直接話がしたいと」

『やはりもう連絡が来ましたか。結婚の意思があるのに女性と旅行にいくことは十分に不貞行為で婚約不履行に値すると話しました。生活費に関しても折半せず、桂さんの収入は貯金に充てているとのことでしたのでその確認もさせてもらいたいと伝えたところかなり動揺されていました。婚約不履行で、こちらとしてはマンションの退去と慰謝料の要求をすると話をしたところご立腹されていましたね』

咲坂さんが「ご立腹されていた」なんて話すってことはもしかしたら悠真に怒鳴られたのではないか。悠真は気に入らないことがあると怒ることもしばしばあったし、理不尽な話をしたのではないか。

「すみません、嫌な思いをさせてしまって」

『これが私の仕事ですからお気になさらずに。それに中丸さんは悪くないですからね。留守電も私に転送できますか? 証拠となるものはひとまず残しておきましょう」

咲坂さんは今後の話を含め端的に説明をしてくれた。私はメモを取ると電話を切った。
咲坂さんと話せたことで少し気持ちが落ち着いて、先ほどまで冷え切っていた指先が温かくなるのを感じた。
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