俺が君を守ってやる〜御曹司の執愛はどこまでも深く〜
「香奈美は可愛いよ。それに真面目だし、性格だっていい。仕事だって丁寧。しいて言うなら押しに弱いところかな。でもそのおかげで仕事で助けられている人が多いからうちの部署でも評判いいよ」

思ってもいない方向から褒められて嬉しいような恥ずかしいような気持ちになる。同じ職場の人からはいい格好しいと言われていることは知っている。だからこそ同じ職場では表面上の付き合いしかない。俯いていると、

「そう言うところで恥ずかしがってしまうところも香奈美の可愛いところだよね」

「そんな……」

「悠真くんは勿体無いことしたって後から後悔すると思うな。でも自業自得。香奈美を大事にできない男にあげるわけにはいかないもの


まるで私の保護者のような話っぷりに笑ってしまう。

「でもね、今の香奈美はなんだかスッキリしてみたいで表情も明るいよ。すごくいい表情してる。これって藤代さんのおかげだよね?」

多分……そうだと思う。マンションを出てきたときにはこんな前向きになれるとは思っていなかった。悲嘆に暮れていた。どうしたらいいのかわからないのに飛び出してしまったが、今となっては後悔もない。本来の自分に戻れた気がする。

「うん。今まで悠真に嫌われないことだけを考えて暮らしてたことに気がついたの。どうしてここまで悠真に気を使っていたのかもうわからない。うまくやろうと頑張ってきたけど、そもそも何で私だけが頑張らないといけないのか、今になってみると不思議で仕方ないの」

「これが俗に言うモラハラなんじゃないの? 香奈美を自分の思い通りに洗脳するって言うかさ」

そうなのかもしれない。同棲する前はもっと対等な関係だったはずだ。それがいつの頃からか徐々に関係が変わってしまった。パワーバランスも傾いてしまった。
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