俺が君を守ってやる〜御曹司の執愛はどこまでも深く〜

「でも藤代さんと一緒に暮らして肩の荷が降りたんだね。藤代さんは香奈美に気があるんだと思うけどな」

笑いながらグイッとサングリアを飲み干す。その言葉にまた胸の奥が疼くが私は気がつかないふりをした。

「藤代さんに迷惑だから余計な想像はやめて。ほら、これも食べようよ」

美和の取り皿に運ばれてきた料理を取り分けてあげた。美和は藤代さんとの生活を聞きたがったが彼のプライベートなことを話すことに気が引けた。それに私だけが知っていたいと思ってしまった。のらりくらりとかわした。

お会計が済み、美和と駅へ向かう。私と美和の帰宅は反対方向なので一緒にいられるのはここまでだ。人も多く怖いことはない。だが、藤代さんに念を押されたため私はメッセージを送ることにした。美和と話をしていたので意識してしまい、たった一言のメッセージを送るもちょっと意識してしまう。

【今から帰ります】

するとすぐに既読がついた。そしてすぐに返信も来た。

【わかった】

たったそれだけのやり取りだったのに、何故か彼がそばにいるような気がしてホッとした。
満員電車だが数駅乗るだけで駅に着く。本当に立地がいいと思う。
改札を出るとすぐに後ろからバッグを引っ張られた。
え？と思い振り返るとそこにはヨレヨレのスーツを着た悠真がすごい形相で立っていた。

「こっち来い」

強引にバッグを引っ張られ、私は改札を出ると人気の少ない方へと連れて行かれた。

「おい！　何考えてるんだよ。弁護士ってなんなんだよ。お前は何様なんだ」

こんなにも悠真が怒っているのは見たことがない。ううん、私がここまで怒らせる前に謝ってきたから知らないだけなのかもしれない。
これが彼の本性なんだと冷静な目で彼を見てしまった。

「香奈美！　お前何考えてるんだ。なんで俺がマンションを出ないといけないんだよ」

「出なくてもいいよ。その代わり私は契約を解消する。だから悠真がまた契約したらいいと思う」

「はぁ？　俺はお前と結婚してやるって言ってるのに？　お前こそ俺を裏切るんだから慰謝料払え。お前が弁護士を用意したから拗れてるんだ。俺は精神的被害も受けてる。その分も上乗せしろよ」

怒鳴り始め、周囲の人が私たちをチラチラと見てきたが興奮してきた悠真は気にならなくなってきているようだ。今までの悠真ならプライドも高いしこんなところで私を罵ることなんてしなかった。今はそんなことさえ気にならないくらい周りが見えていないのだろう。彼が興奮すればするほど私は落ち着いてきた。

「悠真が裏切ったんだよ。後の話は弁護士さんとして欲しい。私はもう悠真と話したくない」

勇気を振り絞って私は悠真に立ち向かった。もう悠真とは分かり合えないし、悠真に流されたくない。でもそんな私の言葉に彼はさらに興奮したのかまた怒鳴り始めた。

「ふざけるな。お前は何様なんだ。いい加減にしろよ。お前は俺の言う通りにしてればいいんだよ！」

そう言うと私の手首をギュッと掴み上げてきた。