俺が君を守ってやる〜御曹司の執愛はどこまでも深く〜
***
彼女から約束した通りに連絡が来てホッとした。迷惑をかけたらいけないから、といつものように遠慮し、連絡をしてこないのではないかとヒヤヒヤしていた。
彼女からのメッセージを見て俺はすぐに駅に迎えに行った。人混みの中、俺はすぐに彼女を見つけたが様子がどこかおかしい。片手をあげ、合図しようかと思ったのも束の間、彼女は引かれるように人気のない方へ消えていった。
俺は慌てて彼女から目を離すことなく、人をかき分けながら彼女の方へと急いで向かっていった。
かなり近距離まで近づいたところで一緒にいるのが元彼であることに気がついた。

「おい! 何考えてるんだよ。弁護士ってなんなんだよ。お前は何様なんだ」

いきなり彼女に怒鳴りつける声が聞こえ俺はすぐに割って入ろうかと思った。お前こそ何様なんだ、とカッと頭に血が登ってきた。彼女を威圧する声に握った手に力が込み上げてきた。弁護士まで立てているのにこうして強引に会いにきて威嚇するとはやはり最低な男だ。けれど彼女の落ち着いた声に俺も少し冷静さを取り戻していった。こんな威圧され人気のないところに連れ込まれ怖いに決まっているのに冷静に話す姿に俺は思わずスマホを手にし、動画を撮影した。もちろん何かあればすぐに割って入る準備はできていた。
気丈にも彼女は自分の気持ちを伝えるが、彼女が落ち着いているのに拮抗してあいつはどんどんとヒートアップしていくようだった。周りが見えず、徐々に自分を失っていっているようにも見えた。
するとあいつは突然彼女の手を掴み、捻りあげようとし始めた。それを見て俺はすぐ止めに入った。
俺が動画を撮っていたことを知ると顔色を変え後退りしながら改札の中へと逃げて行った。追いかけてこのまま警察に突き出してやりたい気持ちもあったが崩れ落ちる彼女の姿に俺は慌てた。抱き抱えると彼女が震えていることに気がつき、本当に申し訳なく思った。もっと早く助けてあげたかったと心から思った。抱き抱えた彼女は細く弱々しく、いつもの朗らかな笑顔からは想像もつかないほどに憔悴していた。俺は気がつくとベンチに座る彼女を抱きしめていた。ただ、彼女を守りたいと強く思った。
ようやく震えが収まってきたところでマンションへ帰るが俺は彼女の手を離せなかった。もうひとときも離れたくなかった。俺の手で彼女を守りたいとただひたすらに願った。帰宅すると彼女はすぐに自室へ戻ってしまう。俺はソファに座り彼女の手を引いていた左手をまじまじと見つめた。こんなに彼女の手は小さかったのだと自覚した。
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