俺が君を守ってやる〜御曹司の執愛はどこまでも深く〜
俺はすぐに咲坂に連絡し、先ほどの出来事を伝えた。もう二度と見たくない不愉快なだけの動画も送信した。咲坂ならこれを証拠にあいつを徹底的に捻り潰してくれるだろう。

「任せておけ。これであいつをお前の大事な中丸さんの前に立てないようにしてやるから」

おい、一言多い、と思いながらも咲坂に任せておけば何の心配もいらないだろうとやっと安堵した。
咲坂にはとうに俺が中丸さんに気があることなんて知られている。俺は同情から同居を持ち出すなんてするような人間じゃない。彼女のことは普段からずっと気になっていた。でも彼女には付き合っている男がいると噂では聞いていたから、どうこうしようとは思っていなかった。ただ、付き合っている男は幸せだなと思っていた。それがあの日、家を出てきたと聞き驚いた。と当時にチャンスだと思った。彼女とは部署も違うしお互い仕事で話す程度。そんなやつのところで生活するなんて嫌に決まっているだろう。そんな彼女にどうしたら警戒されずに手を差し伸べられるかを考えた結論が住み込み家政婦だった。この時くらい今のマンションに住んでいてよかったと思わざるを得なかった。無意味に広いマンションだからこそ彼女に安心してここに住んでもらうことが出来たのだから。
彼女と住み始めてから数日、彼女が気を使わずに生活できるよう心がけた。出ていきたいと思われないよう積極的な接触は避けた。
でも一緒に出かけてしまうとタガが外れ、付き合っているような疑似体験にはまってしまった。一緒に過ごす時間がこんなに楽しいとは想像以上だった。彼女が自分を卑下するたびに、そうじゃない、と慰めてあげたくなりつい抱きしめてしまった。
俺はこんなにも彼女にのめり込むとは思っても見なかった。けれどしっかりしてそうに見えて弱い彼女を俺が支えてやりたいと思った。
もう彼女を離してやることはできない。こんなに傷つけたあいつは許せない。
俺がこの手で幸せにしてやりたいと今日改めて強く思った。
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