俺が君を守ってやる〜御曹司の執愛はどこまでも深く〜
「お疲れさん」

「お疲れ様です」

改めて藤代さんと言葉を交わすとなんだか真鍋くんがいた時と違う雰囲気の藤代さんがいた。真鍋くんがいたときは私たちばかりが話していて藤代さんは聞き役だったが、今は藤代さんが会話をリードしてくれる。
悠真の話はしない。それはきっと私が喜ぶ会話ではないから。
でもさすがに電車の中でこの距離は気まずい。というか顔が近くて戸惑ってしまう。

「藤代さん、こんなに近くで話していたらまた噂されちゃいます」

私は小声で彼に伝えた。すると小さく首を振っていた。
電車を降りると彼は寄り添うようにピッタリと歩き始めた。
少し距離を開けるが、その分また藤代さんは距離を詰めてきた。
その距離感がなんとも言えず私はドキドキしていた。

「き、今日の夕飯は何がいいですかね。確かひき肉を買っておいたからキーマカレーとかはどうですか?」

改札を出たあとから急に彼は近くなり、私はどうしたらいいか分からず、声が上ずる。

「中丸さんの作ったものはなんでも美味しいから任せるよ。でも手伝うから」

「え、まさか。いいんです! 私がやりますから」

「それじゃあ前と同じじゃないか」

少し怒ったような言い方に驚いた。私は彼にとって家政婦のような存在なのだからやってあたり前なのに、と思っていると私の手を取り半歩先を歩き始めた。なぜ今日も手を引かれているのかわからない。何か彼を怒らせてしまうようなことをしてしまったのだろうか。
私はどうしたらいいのかわからず、ただ黙って彼の背中を見ていた。
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