俺が君を守ってやる〜御曹司の執愛はどこまでも深く〜
「私、そろそろここを出て行こうと思います。本当にお世話になりました」

「え? どういうことだ?」

「彼との話し合いが終わったんです。付き纏いもしないよう咲坂さんが念書も作ってくれました。それにあのマンションも引き払いました。なので……」

「このままここにいたらいいじゃないか。俺は、このままここにいて欲しい」

ストレートな言葉に胸をギュッと掴まれる。

「藤代さんはこの状況に流されてませんか? こんな状況にならなかったらきっと私のことなんてなんとも思っていなかったはずです」

自分から話していて虚しくなるが、一度離れてお互い見つめ直してみるべきだと思う。彼を好きだと言う気持ちを自覚してしまった今、私自身離れるのが辛い。けれど、彼にも立ち止まって考えて、それから私を選んで欲しい。同情でも、馴れ合いでもなく純粋に好きになってほしい。

「流されてなんかいない」

短いが力強い言葉に胸の奥が熱くなる。

「私は一度ここから出て、改めて始めたいんです。本当に藤代さんが同情でなく選んでくれたのか自信がないんです」

「俺は最初から気になっていたから家に連れてきた。ただの同僚以上の気持ちがなければそんな簡単に家にはあげない。それだけはわかってほしい」

「はい……」

「中丸さんがここを出ていっても俺が君を好きな気持ちは変わらない。それを証明する」

食事をしていたはずなのに気がつくと私の手は彼に包み込まれていた。
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