俺が君を守ってやる〜御曹司の執愛はどこまでも深く〜
自分で決めたはずなのに辛くて仕方ない。思わず目から涙がこぼれ落ちてしまった。
それを見て藤代さんは驚いたようだったが、立ち上がると私を包み込むように座ったままの私を抱きしめてくれた。

「いつかまたここに戻ってきてくれ。そうなるように俺は君の心をこれから奪いに行くから」

この言葉と同時に私は強く抱きしめられた。思わず私も彼の背中に手を回してしまいたい衝動に駆られるが、手をぎゅっと握りしめた。
どれだけ抱きしめられていただろうか。ふと力が緩み、私から彼の体が離れた。
それと同時に私たちの間に風が入り込むように寒く感じる。

「すまない」

小さな声が聞こえて来た。
私は首を横に振る。
むしろ離れてしまった体温が寂しかった。
お互いいつものように向かい合い食事をした。これが最後の晩餐になるかもしれないと頭の片隅にあったが、何もなかったようにいつも通りだった。
私は翌日彼のマンションを出た。
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