俺が君を守ってやる〜御曹司の執愛はどこまでも深く〜
「あー、腹減ったな」

ソファで横になった私を横目に彼は立ち上がった。

「あ、悠真はシャワー浴びてきたら? その間に夕飯作っておくから」

「え? あ、そう? じゃ、いってくるわ」

そう言うと彼はバスルームへ行ってしまった。私は乱れた服を元に戻すと慌ててキッチンに立つ。
まな板の上に置かれたままの食材を混ぜ合わせるとフライパンで焼き、その間に付け合わせやスープの支度をする。焼き上がったハンバーグをソースで煮込んでいると彼は濡れた髪の毛を拭きながらテーブルに座った。
私が並べ始めると端からどんどんと食べ進めてしまう。彼はあっという間に食べ終わり、私がテーブルにつく頃にはすでにソファでテレビのリモコンをいじっていた。
え?と思ったが、口には出さず、ひとりテーブルに座るとそっと手を合わせた。

いただきます……。

実家でもこうだった。私が料理するのを家族は座って待ち、出されたら私が座るのを待つこともなく食べてしまう。家族は会話を楽しみながら食事をしているのに、私が着席する頃には食べ終わり立ち上がってしまう。
ひとりで食べる食事は何だか味気ない。悠真と暮らし始めた頃は一緒に食卓を囲める幸せを噛み締めていた。でもいつの頃からか彼は私を待たずに食べるようになった。あと片付けも手伝ってくれることは無くなった。掃除も洗濯も私に頼るようになった。
彼が私に「ありがとう」と言ってくれる言葉が嬉しかった。でも今となってはその言葉もない。やってもらえるのが当たり前になってしまった。
でも悠真は私に優しい。今まで家族にもらえなかった欲しい言葉をくれる。だから悠真からの離れるなんて考えられなかった。
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