俺が君を守ってやる〜御曹司の執愛はどこまでも深く〜
真鍋くんと話していると、うっかり目元が緩みそうになる。こんなところで私情を挟むべきではない。奥歯を噛み締めるとむりやり笑顔を浮かべる。

「そうだね! 藤代さんならすぐにいい人が見つかりそうだね」

私は預かった資料を胸に抱き、必死でこの気持ちを悟られないように普段よりも明るく振る舞った。
あぁ、現実はやっぱり私みたいな女に彼のような素敵な人が現れるわけないんだよね。少し良くしてもらったからって縋り付いてはダメ。
一緒に暮らしたあの時間はひとときの夢だったのかもしれない。夢を見させてもらって感謝こそすれ、彼を悪く思う気持ちなんて少しもなかった。
あとは私の中で膨らんでしまった彼への気持ちを風化させるだけ……。
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