俺が君を守ってやる〜御曹司の執愛はどこまでも深く〜
ピンポン…
玄関のインターホンが鳴る。
21時を過ぎ、こんな時間に訪れる人なんていない。
もしかして、悠真?
忘れていたはずの感情が背筋を凍らす。
どうしよう……。私はビクビクしながらインターホンの画面を覗き込むと藤代さんが写っていた。

「はい」

「中丸さん? 藤代です。こんな時間にすまない。どうしても帰国してすぐに話たいことがあって。さっきまで会議をしていたからこんな時間になってしまったんだ。少しだけ話せないか?」

なぜこんな時間に私の部屋に? 
引っ越す時に彼から、心配だから連絡先を教えてほしいと言われた。でもそのあと彼がここにくることは一度もなかった。それなのになぜ今日?
突然の訪問に驚いたが、正直なところ私も彼と話がしたかった。玄関の鍵を開けるとスーツケースを持ったままの彼が立っていた。

「遅い時間にすまない」

私の顔を見てまた謝ってくれる。どこか疲れたような表情を浮かべる彼をそのまま立たせておけず、私は部屋の中へ招き入れた。

「入っていいのか?」

私は頷くと彼は玄関の中に入ってきた。スーツケースで玄関がいっぱいになるほど狭い私の部屋。彼の部屋で一緒に過ごしていた私は今の部屋を見せるのが恥ずかしくなってしまう。

「すみません、狭い部屋で。よかったら何か飲み物を出しますね」

「あ、そんなに気を使わなくていいよ。ただでさえこんな時間来て申し訳ないし」

部屋に入った彼は申し訳なさそうな表情を浮かべる。なんだかこんなふうにやり取りをするなんて久しぶり。少しだけ気持ちが高揚した。
< 75 / 105 >

この作品をシェア

pagetop