俺が君を守ってやる〜御曹司の執愛はどこまでも深く〜
「連絡がなかなかできずにすまなかった」

彼は急に私の前に正座し、頭を下げてきた。驚いた私は彼に頭を上げるよう言ったが、なかなか上げてくれない。

「藤代さん!」

「本当にすまない。君も知っての通り、あのあとすぐに国際事業部に移動になった。それでシカゴに行かなければならなくなって仕事に追われていた。君に連絡をしたくても向こうとの時差で夜中もアメリカからの連絡が来ていた。でもそんなことは言い訳にしかならない。一番大切にしたいときに俺は君を大切にできなかった」

そっか……。シカゴとの時差は14時間。こっちは夜でも向こうは昼間。新規事業のためお互いに急ピッチで動いていたのだろう。
私が一人納得していると、彼は私の表情を伺うように顔を見つめてきた。

「決して君を(ないが)しろにしたわけではない。今でも大切に思っているんだ。仕事を言い訳にしたくはないが、本当に君のことはひとときも忘れたことはなかった」

そう言うと私の膝に置いてあった手を上から重ねるようにそっと握り締めてきた。

「私は……、私だって忘れたことはありませんでした。でも、藤代さんは私と離れてみて冷静になったんだと思っていました。考え直して私とのことはなかったことにしたくて連絡をくれなくなったんだと思ったんです」

「そんなことはない。むしろ離れたからこそ余計に俺の中の君への気持ちは日増しに大きくなっていったよ。出張に行っている間も君が心変わりするんじゃないかと心配だった」

「私が心変わり?」

「あぁ。彼と別れられて俺のことがよく見えていただけで、もっといい奴がそばにいるって気がついてしまうんじゃないかって。もっと積極的にアプローチしたいのに、なんでこのタイミングでシカゴなんだとため息が出たよ」
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