俺が君を守ってやる〜御曹司の執愛はどこまでも深く〜
腕時計を見た彼は、少し早めだけど旅館でゆっくりしようかと言い、車の方へと歩き始めた。
車に乗り20分くらい走ったところで石壁で囲まれたところに入って行った。てっきり大きなホテルのようなものを想像していたので少し驚いた。平屋造りの日本家屋で入り口には着物を着た女性や法被を着た男性が並んでいた。車が入ってきたのを見て誘導もしてくれていた。まさかと思ったが、ここに今日泊まるらしい。思わず運転席の彼の顔を見ると頷いていた。

「藤代様、お待ちしておりました」

助手席のドアを開けられ、私は外に出ると仲居さんたちも並んでいるのを見て固まってしまった。

「荷物は後部座席に積んでます。よろしくお願いします」

晴臣さんは慣れた様子で声をかけると、かしこまりましたと言い、車のキーを預けられていた。中に入るよう私の腰にそっと手を添え、私たちは中へ入った。
晴臣さんにソファで待つように座らされている間にさっと受付をすませてくれたようで、すぐに私たちは仲居さんに部屋へと案内された。
ここは一つ一つの部屋が全て離れになっているようで木がたくさん植えられ、お互いの部屋が見えにくいよう配慮もされいるようだ。なんだかお忍びで来るような旅館でワクワクしてしまう。
中へ案内されると畳のいい匂いがした。居室は10畳の部屋と隣にはベッドルームがあった。正面の開かれた庭には露天風呂が見えた。今の季節にぴったりの紅葉の綺麗な植栽に目を惹かれる。
< 94 / 105 >

この作品をシェア

pagetop