四月一日の花嫁
ウェディングドレスーーーそれは、一生に一度の日に着ることができる特別な衣装だ。純白のドレスに身を包んだ花嫁は、愛する人と永遠を誓うことに胸を幸せで満たしながら誓うその瞬間を待っているのだろう。

そんな特別なドレスを今、朝比奈藍(あさひなあい)は虚しさを感じながら着ている。目の前に置かれた鏡には幼い頃から憧れを抱いていたプリンセスラインのドレスを着た自分の姿が映っている。しかし、その美しいドレスには不釣り合いなほど、彼女の顔に表情はなかった。

花嫁控え室のドアがノックされる。「はい」と淡々とした声で藍が答えると、ドアがゆっくりと開いた。そしてタキシードを着た東堂彰人(とうどうあきと)が入って来る。その顔はどこか緊張しているように見えた。

「藍さん……」

ドレス姿を見た彰人はそう言ったまま、藍を見つめる。どこか気まずい沈黙が少し流れた後、彰人はゆっくりと口を開いた。

「その、綺麗です……。ドレスも、アクセサリーも、全部……」
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