四月一日の花嫁
親の経営する会社とは全く関係のない会社で、藍は事務員として働き、築二十年近くの綺麗とはあまり言えないアパートで質素ながらも満足した一人暮らしを謳歌していた。

(そろそろ彼氏ほしいな。いつかは結婚したいし)

これまで自分の力で道を切り開いてきた。結婚も自分の好きな人を見つけ、幸せな家庭を築きたい。そう思っていた矢先の出来事だった。

父親から「家に帰ってくるように」と電話がかかってきたため、藍は就職してからはあまり帰ることのなかった実家の門をくぐった。そして両親から頭を下げられたのだ。

「頼む!東堂グループの次男と結婚してくれ!」

話を聞くと、藍の父が経営する会社の経営は随分前から傾き、倒産するまで時間がかからない状態だったそうだ。そんな時、同じく会社を経営している東堂グループの社長から援助の話を持ち掛けられたそうだ。

「社長の援助の条件が、お互いの子どもの結婚なんだ。それがなければ援助はしないと……。藍!頼む!社員の未来も掛かっているんだ!」
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