社畜地味OLは異動してきた甘々上司に甘やかされるそうです。
「おおっ、結構人来てますねえ」

 球場の出入り口に到着するとそこは2チームのファンが既に駆けつけていたのか多くの人でごった返している。スーツ姿の男性や制服姿の若い男女の姿も見えた。

(なんかアオハルって感じだな)

 ブレザー型の制服の上から推しと思われる選手のユニフォームをカーディガンのように羽織って友達や彼氏らしき男子と一緒ににこやかに球場内へと入っていく女子を見ると少しだけ、あの頃に戻りたいと思うようになった。

「知代子さん、どうしましたか?」

 私が何かを考えている事は、どうやら上川部長にも伝わっていたらしい。

「あ、制服着てる子いるなって。私もあの頃に戻りたいなあ、なんて」

 苦笑いを浮かべながらそう語ると、上川部長は私の左手を優しく握った。

「これから楽しめばいいんですよ。まだまだ時間はありますから。それと俺も高校時代に戻りたいなとか。考える事あるので気持ちわかります」
「そうですか……そうですよね」

 そうだ、これから楽しんでいけばいいんだ。そう考えると胸の中にあった何かが取れたような、そんな気がした。
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