社畜地味OLは異動してきた甘々上司に甘やかされるそうです。

「美味しい！」

　ご飯を食べながらの野球観戦はあっという間に終わった。
　結果は8対9でホームチームの勝利。試合が終わった後もスタジアムは熱狂のるつぼにいる。

「楽しかったですか？」

　上川部長の自宅前で、彼はそう聞いてきた。

「すっごく、楽しかったです」
「良かったです。知代子さんの笑う顔、好きです」
「部長のおかげですよ」

　その後、彼の自宅に置いてあった荷物や彼が買ってくれたものを受け取り、私は帰路についたのだった。その時も駅まで部長が見送ってくれた。

「気をつけてね」
「見送りありがとうございます」
「いえいえ、また明日」

　夢のような時間が終わり、家に帰宅する。家族はまだ起きているようだ。

「知代子おかえり。髪切ったの？」

　母親がソファから振り返って私の髪を見る。

「うん。ばっさり切ったの。似合うでしょ？」
「なんか一気に大人になったねえ。かっこいいよそれ」
「お母さんもそう思う？」

　母親がまるで誰かに見惚れているように私の髪を見ているとリビングに弟がやってきた。

「姉ちゃん？！」
「あ、ごめん。驚いた？　髪切ったの」
「いやいや全然……もしかして姉ちゃん彼氏出来たの？」