社畜地味OLは異動してきた甘々上司に甘やかされるそうです。
「……マジ?」

 軽いノリで自分の事だと社畜だと言ったら、男性の顔が引きつるのが見えた。もしかしてドン引きしてしまったのだろうか。

(あ、やってしまった……)
「す、すみません、引きましたよね……」

 私は思わず男性に頭を下げて謝った。男性の顔をちらっと見上げた瞬間、うわ、絶対ドン引きしてるよな……。と胸の中で後悔の言葉がどばどばと漏れ出してくる。
 
「あの、顔上げてください。あなたは悪くないですよ」
「や、でも……社畜って言ってしまった引かせてしまったかもって思って……」
「あなたは残業を頑張ってるだけですよ。悪いのは残業が出るシステムとか、そういうのにあるんじゃないですか?」
「……あ」

 男性は私の両手をぎゅっと重ねるようにして優しく握ってくれた上、にっこりと優しい笑みを浮かべた。

「せっかくですし、お酒飲みながら愚痴ってください。俺全部聞きますから」

 なんだこの人は。もしかして天使か……?
 気が付けば私は顔をくしゃくしゃにしてはい……っ! と返事をしていたのだった。

「じゃあ、お酒のつまみも用意しますね。俺こう見えて料理得意なんで!」

 男性はレジ袋をリビングの黒いシックな食卓テーブルの上に丁寧に置くと、割と広めなキッチンに移動する。おっ料理男子か。とちょっとだけ胸の中がボールのように弾んだ気がした。彼からどのようなものを食べたいかと問われた瞬間お腹がぐるぐるとなり始めたのでさっとお腹を両手で押さえる。

「す、すみません! おなかすいちゃってて……」
「や、全然気にしないでください! じゃあガッツリ系で行きます? アレルギーあったら言ってくださいね!」
「アレルギーは無いので大丈夫です! じゃあガッツリ系お願いしようかな……」
「了解です。じゃあ作ってきますんでテレビでも見といてください」

 キッチンから遠目に見えた彼の笑顔は、夏の太陽のようにまぶしく見えた。
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