身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
 幸い能力があったし、努力も苦にならなかったのでプレッシャーに押しつぶされることなく大人になった。

 家業に入ってからは仕事にやりがいを感じ、やみくもに働いた。
 業務に追われる毎日の中、唯一の息抜きは趣味の料理くらいだった。

 耀は血筋ではなく実力で後継者になるべく実績をあげ、宇賀地グループの主軸を担う食品事業部の専務になった。

 そんな中、持ち込まれたのが祖父の意向による見合い話だ。
 相手は旧華族の名家、嵯峨家の長女嵯峨亜希奈。
 しかし耀は自分の妻を家柄で選ぶつもりはなかった。
 嵯峨家と縁を結んでも宇賀地ホールディングスに利益がないのは明確だ。
 嵯峨家は前当主が亡くなった後、婿養子が後を継いでいるが影が薄く、嵯峨建設も保守的な経営を続けており将来性は感じられない。
 嵯峨家がこの結婚で宇賀地ホールディングスから資金的恩恵を受けたいと思っているのは間違いなかった。
 
 耀は仕事の忙しさを理由にのらりくらりと亜希奈と会うことを避け続けた。
 正式に断らなければ祖父が自分に別の良家との縁談を用意することはないだろうという目論見もあった。
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