身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
 亜希奈も結婚して縛られるより自由に遊びたがったようで、その内男にまつわる良くない噂を聞くようになった。

 縁談が出て2年、祖父からの催促も頻繁になり、さすがそろそろ逃げられないと思った耀は亜希奈に会うことにした。
 断るにしてもとりあえず見合いをすれば祖父への義理を果たせるだろう。その程度の考えだった。
 
 しかし日程が決まった後、嵯峨家からお見合い相手を娘から姪に変えたいと申し出があった。
 理由は濁されたが、亜希奈が男と逃げたことは容易に想像できた。
 それでも縁談を辞退しない嵯峨家に呆れを通り越して感心するくらいだった。

 それなら、その厚かましさに免じてその姪と会ってやると思いつつ耀は見合いに臨んだ。
 もちろん相手が変わろうと断るのは変わらない。

 どんなつわものの令嬢が来るのかと思っていたが、結乃は、緊張しながらはにかむ笑顔が好ましい普通の女性に見えた。

 懐石料理など食べ慣れているはずなのに顔を輝かせて美味しそうに料理を頬張る表情も愛らしかった。

 しかし耀は結乃に好印象を持てば持つほど無性に苛立ちを覚えた。
 姪といえど嵯峨家で育ったご令嬢。この子は自分と結婚するのも、将来社長夫人になるのも当然の権利だと思っているのだと。

 しかしふたりきりになった時、なぜか『どちらから見合いを断るか』という話し合いになった。
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