身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
『私が代役になった時点で嵯峨家の落ち度ですから。もうすっぱり断っていただいて大丈夫です』

 やけにあっさりした態度だった。わかったと言えば済む話なのに、ついきつい言葉を浴びせてしまった。

『将来の”社長夫人”という肩書に惹かれて深く考えもせず代役を受けたんだろうが、今の世の中、家柄だけでやっていけるほど甘くないことを知った方がいい』

 8才も年下の年若い女性に何を、と口に出した瞬間後悔した。

 しかし彼女の反応は思いもしないものだった。

『だったらあなただって家柄越しにしか私を見ていませんよね。結婚って幸せになるためにするんでしょう? 幸せな家庭を築ける相手がどうか知るのがお見合いなんじゃないですか? 私だってあなたとの結婚なんて御免です。そんな硬い頭だと、一生ロクな結婚できませんよ!』

 こちらを真っすぐ見据えて言い返してきた結乃。怒りに捕らわれ、我を忘れているのになぜかその剝き出しの表情に不思議と目を奪われ、すぐに反応することができなかった。

(あの時はとんでもなく気の強い女性だなと驚いたが、それだけのはずだった)
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